小型冷媒回収機用真空ブースタポンプ
【1】はじめに
地球環境保護意識の高まりから、冷凍・空調業界においてもフロン冷媒回収は年々増加傾向にあります。冷媒回収機メーカー・販売店の数も増え、回収機の種類も多くなりました。回収事業者としてはうれしいことではありますが、一方で冷媒回収機の小型化・軽量化・多機能をはかる余り、冷媒回収能力に限界が生じているのではないでしょうか。
当社も各社の冷媒回収機を33台採用してきましたが、故障率が高く、冷媒回収能力の限界を感じました。そこで、当社で開発した、中・大型冷媒回収機に採用している長年の実績があるエジェクター方式の真空ブースタポンプを装着した、汎用小型冷媒回収機を開発しました。
当社も各社の冷媒回収機を33台採用してきましたが、故障率が高く、冷媒回収能力の限界を感じました。そこで、当社で開発した、中・大型冷媒回収機に採用している長年の実績があるエジェクター方式の真空ブースタポンプを装着した、汎用小型冷媒回収機を開発しました。
【2】開発目的
2.1 故障率の低減
汎用小型冷媒回収機に搭載されているコンプレッサーは、オイルレスのレシプロ方式が主流になりつつあります。
フロンガスの飽和圧力が大気圧力以上であれば、コンプレッサー内のシリンダー部を冷却する物質は存在します。しかし大気圧力以下においては、冷却物質の存在が少なく、シリンダー部の温度上昇が顕著にあらわれ、ピストン・ピストンリングの摩耗を誘発させます。また、オイル入りコンプレッサーにおいては、大気圧力以下の状態では、コンプレッサー内のオイル上がりが多くなり、潤滑不良をきたします。
シリンダー部の温度上昇を抑制し、コンプレッサー内のオイル上がり現象を最小限にすれば、故障率は格段に低減されます。
フロンガスの飽和圧力が大気圧力以上であれば、コンプレッサー内のシリンダー部を冷却する物質は存在します。しかし大気圧力以下においては、冷却物質の存在が少なく、シリンダー部の温度上昇が顕著にあらわれ、ピストン・ピストンリングの摩耗を誘発させます。また、オイル入りコンプレッサーにおいては、大気圧力以下の状態では、コンプレッサー内のオイル上がりが多くなり、潤滑不良をきたします。
シリンダー部の温度上昇を抑制し、コンプレッサー内のオイル上がり現象を最小限にすれば、故障率は格段に低減されます。
2.2 回収率の向上
冷媒回収対象機器の据付環境、冷媒回収機の周囲温度、回収容器内の飽和圧力等で回収率は大きく左右されますが、冷媒回収機の回収能力を最大限に利用し、回収率の向上をはかります。
2.3 全自動運転を可能にする
以下のような場合は、冷媒回収機の故障・回収率の低下等が懸念されるため、一般的な冷媒回収機と同じような標準の使用方法で全自動運転を可能にします。
- 回収技術者が冷媒回収機を使用する場合
- 真空ブースタポンプの装着機と未装着機で操作方法が異なった場合
2.4 メンテナンスを容易にする
冷媒回収機を使用するにあたり、一般的な点検を実施することは当然でありますが、真空ブースタポンプの毎点検時間を1,000時間以上とし、回収技術者の負担を軽減します。
【3】小型冷媒回収機に採用した真空ブースタポンプ概要
3.1
本装置は回収した高圧で高密度な冷媒を噴射媒体とした、エジェクター方式の真空ブースタポンプを小型冷媒回収機に採用し2段圧縮としました。
ただし、吸入圧力が大気圧力以上で本装置が作動した場合、回収にかかる時間が約20%長くなります。このため本装置の作動は、吸入圧力が大気圧力以下（▲0.04 MPa）としました。
本装置が作動中のコンプレッサー吸入圧力（中間圧力）を0.00 MPaに設定し、コンプレッサーの圧縮比を低くしました。また、高密度な冷媒を噴射媒体としているため、シリンダー部の温度上昇を抑制する効果があります。
ただし、吸入圧力が大気圧力以上で本装置が作動した場合、回収にかかる時間が約20%長くなります。このため本装置の作動は、吸入圧力が大気圧力以下（▲0.04 MPa）としました。
本装置が作動中のコンプレッサー吸入圧力（中間圧力）を0.00 MPaに設定し、コンプレッサーの圧縮比を低くしました。また、高密度な冷媒を噴射媒体としているため、シリンダー部の温度上昇を抑制する効果があります。
3.2
JARAC（日本冷凍空調設備工業連合会）推奨吸引レベルは、ユニット型、高圧冷媒の場合、▲0.026 MPaがガイドライン数値です。冷媒回収時間を短縮し、対象機器内の圧力をガイドライン数値にするには、アクセスポート・回収ホース抵抗を考えると、冷媒回収機の吸入圧力は▲0.06 MPa程度まで降下させる必要があります。
本装置は、容易に高真空が得られ、実証テストにおいては▲0.09 MPaが確認されました。
3.3 真空ブースタの仕様
真空ブースタは図1の通り小型、軽量化をはかり、配管途中に容易に取り付けを可能にしました。また、本体にストレーナーを内蔵し、異物の混入を防ぐ工夫も施しました。
真空ブースタの仕様は次の通りです。
真空ブースタの仕様は次の通りです。
図1 真空ブースタ外観
| 形式 | GH-04 |
| 外観寸法全長 | 5cm |
| 質量 | 110g |
| 排気量 | 15L/min |
3.4 真空ブースタのフロー概要
図2 真空ブースタフロー
【4】実証テスト概要
図3に示す通り、汎用小型冷媒回収機では、冷媒回収開始後約6分で吸入圧力は▲0.06 MPaに到達します。しかし、15分間までの時間経過後においても圧力、回収量の変化はみられません。
真空ブースタポンプの装着機では、ブースタ作動時より時間経過と共に圧力が下降し、ブースタ未装着機と比較した場合18%回収量は増しました。
理論計算値より多くなった要因は、コンプレッサー内部の冷凍機油に含まれた媒体も回収された結果と考えられます。
真空ブースタポンプの装着機では、ブースタ作動時より時間経過と共に圧力が下降し、ブースタ未装着機と比較した場合18%回収量は増しました。
理論計算値より多くなった要因は、コンプレッサー内部の冷凍機油に含まれた媒体も回収された結果と考えられます。
図3 実証テストデータ
○印：ブースタ装着機、×印：ブースタ未装着機
実証テスト条件参考値
フロンガス | R22 |
外気湿度条件 | 23.5℃ |
対象機器 | ルームエアコン3.6kW（冷媒封入量 1.53kg） |
使用ブースタ | GH-04型 |
【5】おわりに
地球環境保護から考えると、回収事業者は回収率を向上させることが責務だと思います。また、回収技術者にとっては故障率の低い冷媒回収機の使用を望みます。冷媒回収機を前に置き、このジレンマを抱いている回収事業者も多いことと思います。
当社では、特許出願や実用新案等を取得する意志はありません。当社の技術が多くの量産メーカーに活用され、冷媒回収率が少しでも向上すればと期待しています。
